(2002.11.1)
10月16日,滋賀県議会は「琵琶湖のレジャー利用適正化条例」を可決し,この条例を来年4月に施行することを公表しました.
条例では,大きなブームとなっている「バス釣り」の愛好者の間でも関心の高かった「ブラックバスなど外来魚の再放流(リリース)を禁止する」条項が盛り込まれています.
このほか同条例では,環境悪化を防ぐために,未燃焼のガソリンが排出されやすい2サイクルエンジンを搭載したレジャー用ボートや水上バイクの航行を2006年から禁止することも明示されています.○条例可決についてのニュース
・朝日新聞(2002年10月16日)
・毎日新聞(2002年10月16日)○琵琶湖レジャー利用の適正化ポータルサイト(滋賀県)
条例のしくみや全文,県民の政策コメントなど.琵琶湖をはじめ各地の淡水環境では,近年の環境悪化や外来魚による捕食などにより,日本在来の淡水魚が減少していることが問題となっています.
滋賀県による上記の条例は,とくに罰則は決められていないものの,このような現状に一石を投じる「全国初の外来魚に対する規制」として,今後 各地に影響を及ぼすことになるでしょう.さまざまな要因で危機に陥っている「琵琶湖の淡水魚の現状」や,急速に数を減らしている「在来の希少淡水魚の保護」については,以下の雑誌特集記事をご覧ください.
○『生物の科学 遺伝』(裳華房) 2002年11月号(56巻6号)(最新号)
特集I 「琵琶湖の在来淡水魚の危機」(高桑 進 企画)
特集II 「日本産希少淡水魚の保護」(細谷和海 企画)
●その他の関連書籍
○『ブラックバスがメダカを食う』秋月岩魚 著(宝島社)
一般に向けて「外来魚の在来魚への影響」について問題提起し,話題となった本.○『外来種ハンドブック』日本生態学会 編/村上興正・鷲谷いづみ 監修(地人書館)
日本生態学会外来種検討作業部会を中心とし,官庁・地方自治体・NGOの活動を網羅した初の総合書.外来種の基本事項から法整備への提案,個々の地域・種を取りあげた具体的な事例まで,1冊で現状をつかめるハンドブックです.○『川と湖沼の侵入者ブラックバス −その生物学と生態系への影響』日本魚類学会自然保護委員会 編(恒星社厚生閣)
外来魚オオクチバスの研究成果を基盤とした書.生物学的特性と分布の現状の正確な把握から,自然生態系へ与える影響について科学的に究明しています.●琵琶湖についての情報サイト
○滋賀県琵琶湖研究所
1982年(昭和57年)に滋賀県が作った琵琶湖の環境を守るための研究所のサイトです.琵琶湖に関するさまざまなデータベース・資料が閲覧できます.○滋賀県 琵琶湖環境部
琵琶湖のネットワーク,ボランティア,レジャー情報などもわかります.●湖沼環境をめぐる国際組織
○(財) 国際湖沼環境委員会(ILEC)
世界の湖沼環境の健全な管理と持続的な開発について,国際的な知識交流と調査研究を推進するために1986年に設立され,翌年には環境庁および外務省の共同管轄となった機関です.○世界湖沼会議
第9回会議は2001年に琵琶湖で行われました.人類と地球の未来にとってかけがえのない湖沼を健全な状態に再生していくため,湖にかかわるすべての個人・組織が力を合わせて努力を続けることの重要性を盛り込んだ「琵琶湖宣言2001」が採択されています.
第10回会議は,国際湖沼環境委員会(ILEC)と,国際大湖沼研究協会(IAGLR:International Association for Grate Lakes Research)の主催で行われ,「大湖沼についての地球規模の脅威:環境の不安定性と予測不可能性への対処 (Global Threats to Large Lakes:Managing in an Environment of Instability and Unpredictability)」と題して,2003年6月22日から26日までの5日間にわたって,デポール大学(アメリカ・イリノイ州シカゴ)で開催されます.
自然科学書出版 裳華房 SHOKABO Co., Ltd.