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竹内端三 著『函数論 上巻』『函数論 下巻』[初版:大正15年]先月に引き続き、今号でも裳華房の東京開業120周年記念事業の一つとしてオンデマンド出版書籍として刊行予定のものをご紹介します。竹内端三著『函数論』です。
【上巻】https://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-1022-6.htm 著者の竹内先生については、すでに本コラムの16回(Shokabo-News No.291;2013年6月号)で『高等微分學』(初版 大正11年)を取り上げた際にご略歴などをご紹介しましたので、ご参照ください。
「裳華房の“古書”探訪(16)」竹内端三著『高等微分學』
複素関数論は現代数学の基礎分野の一つであり、物理学や工学にも大変に重要なため、多数の書籍が刊行されていますが、大正15年に刊行された本書『函数論 上巻』『函数論 下巻』は、この分野の先駆的な名著として評価されているものです。裳華房としてのみならず、日本におけるこの分野の最初の成書だと思われます。 上巻は一価関数に関する性質を平易に解説し、下巻では多価関数、楕円函数、等角写像を扱います。初版の目次を下記に記します(漢字は新字に修正)。
【上巻】緒論/複素数/初等函数/微分法/積分法/べき級数/特異点 初版刊行から6年経った昭和7年に増訂版を刊行。いわゆる微分積分学の学習からの繋がりを良くするための増補や、「解析関数」の章を独立させるなどの訂正が行われています。 各章末には、学習者の便宜を図るように豊富な演習問題を収めているのも本書の大きな特徴で、40題近く掲載している章もあります。ページ数の関係からか解答は一部のみしか掲載されていませんが、読者の要望に応えるべく、本書に収めた問題の詳解と例題を収めた『函数論 問題解説 上巻』『〃 下巻』が、昭和11年と12年に佐藤正孝氏との共著で刊行されています。
本書は、戦前・戦後を通して関数論の入門書として、(資料が残っていないため部数は分かりませんが)多数の読者に支持されてきましたが、文語体・片仮名書き・旧字での表記であったため、(内容を理解する以上に)通読すること自体が難しい状況になりました。
なお本書の初版は,国立国会図書館のデジタルアーカイブで一般に公開されており、『問題解説』も国立国会図書館の館内閲覧限定で公開されております。
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