かに星雲 M1 (Crab Nebula M1)

ローサットが撮影した
かに星雲のX線像

かに星雲の可視光像

左図はローサットが撮影したかに星雲のX線像です. 右図は可視光像で,X線像はだいたい青い四角の部分にあたります. X線で見ると,中心に点源があり, そのまわりに星雲状のものが広がっているのがわかります. 中性子星の近傍では,非常に高エネルギーの電子が生成されており, 中性子星周辺の磁場の中でシンクロトロン放射をして, 強いX線が放射されているのです.

This image is reproduced from ROSAT Mission/Max-Planck-Institut fur extraterrestrische Physik.
URL (http://www.xray.mpe.mpg.de/)

M1 (NGC1952)
おうし座 かに星雲/超新星残骸
赤経 05h34.5m 赤緯 +22゜01′
実視等級 8.4等  視直径 5′
距離 7200光年

かに星雲M1は西暦1054年に出現した超新星の残骸です. イギリスのロス卿が観察して, 微細なフィラメント構造がカニの足のような印象を持ち, 「かに星雲」と命名しました. かに星雲の中心星は,中性子星で, 1/30秒周期で一定の電波を出すパルサーとして有名です.

資料提供:大阪教育大学

1999年夏に打ち上げられたNASAのX線衛星チャンドラが, 早速,かに星雲の詳細な画像を撮像しました.

画面の左下と右上に向かって,中心の中性子星からジェットが噴出しているのが, はっきりと写っています.
ハーバードスミソニアン天体物理学センターのチャンドラ衛星のホームページより.
Copyright (NASA/CXC/SAO)
URL (http://chandra.harvard.edu/photo/0052/index.html)

かに星雲のX線スペクトル

1994年9月に あすか のGIS2検出器(またはGIS3検出器) で取得したX線のエネルギースペクトルです. 数ヶ所に構造が見えますが,これはX線検出器の応答の性質によるものであって, 天体からのX線には特別な構造が見当たりません.

このスペクトルは,巾関数で表されます. これは中性子星の近くで加速された高いエネルギーの電子が, 磁場の中を運動するときに放射していると考えると説明できます.
このX線の放射機構はシンクロトロン放射と呼ばれるもので, 地球上の加速器でも強いX線ビームを得るために用いられています. 筑波の高エネルギー研究所,岡崎の分子科学研究所, 西播磨のSPring-8などの施設は,このような機構で高輝度のX線ビームを得ているのです.

また,かに星雲はとても明るいX線天体であるので, 昔からたくさんの観測がなされてきました. またスペクトルの形も単純であるため, そのスペクトルは検出器の較正によく使われます. 上のスペクトルもGIS検出器の較正のためにとられたものです.

資料提供:深沢泰司(東京大学),石崎欣尚(都立大学),石田学(宇宙科学研究所), 久保田あや(東京大学)


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