相対論的降着円盤(Relativistic Accretion Disk)

X線連星などでは, ブラックホールや中性子星のまわりに形成された高温のガス円盤 (降着円盤)が強いX線を放射しています. このようなガス円盤から出てくる光は, ブラックホール(や中性子星)の強い重力場によって大きな影響を受けます. 相対論的な効果を考慮したコンピュータシミュレーションによると, ブラックホールのまわりのガス円盤は以下のような姿に見えると想像されています.


左上:相対論的な効果を無視した単純に幾何学的な見え方
右上:特殊相対論的なドップラー効果だけ考慮した見え方
左下:一般相対論的な光線の曲がりだけ考慮した見え方
右下:すべての相対論的効果を考慮した見え方
まず一つは,ブラックホールのまわりを光速に近い速度で回転しているので, いわゆる ドップラー効果が非常に強くなり, 近づいてくる側(画像の左側)からの光が遠ざかっている側(画像の右側)からの光より, 強くなって観測されます(光のエネルギーは振動数に比例するためです). その結果,画像の左側が明るくなって見えます(左図の右上の画像).

またもう一つは,ブラックホールの重力場で光線が曲がるため, 円盤の手前側(画像の下側)から出てくる光はほぼまっすぐに届きますが, 円盤の向こう側(画像の上側)から出てくる光は大きく曲げられて届きます. その結果,画像の上側が屈折して折り曲げられたように見えます(左図の左下の画像).

その他にも,高速回転運動による時間の遅れの効果や, 重力場中での赤方偏移の効果なども加わります.

なお,画像の中央の黒い部分は,ブラックホールではなく, ブラックホールの周辺付近でガス円盤が存在しない領域で, 相対論的な効果がなければ楕円状の穴に見えますが, 光線の曲がりのために歪んだ饅頭形の穴に見えています. ブラックホールそのものは黒い領域の1/3ぐらいの大きさです.


X線連星や活動銀河核からのスペクトルを解析するときには, このような相対論的な効果についても考慮する必要があるのです.

いろいろな方向から見たイメージ.
上から,円盤赤道面からの俯角が,10°,5°,0.1°.


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