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生物の形の多様性と進化 −遺伝子から生態系まで−
Diversity in Pattern and Form of Biological Systems −From DNA to Ecological System−
中部大学名誉教授 理博 関村利朗・
徳島大学名誉教授 理博 野地澄晴・
元 千葉県立中央博物館上席研究員 理博 森田利仁 共編
A5判/372頁/定価4730円(本体4300円+税10%)/2003年6月発行
ISBN 978-4-7853-5837-2(旧ISBN 4-7853-5837-8)
C3045
動物・植物にかかわらず、生物はじつにさまざまな形をしている。これら生物の形は、どのように形成され、またその多様性はどのように進化してきたのであろうか。遺伝学、発生生物学、進化生態学、数理科学、系統学、古生物学など、多方面からアプローチされているが、真の理解にはいまだほど遠い。
本書では、生物の形の多様性と進化についての普遍的な考え方・原理を探究する第一歩として、研究の現状と新たな展開の萌芽を、各分野の第一線で活躍する研究者がわかりやすく紹介する。
日本図書館協会選定図書
サポート情報
◎ 正誤表 (pdfファイル)
第 I 編 形の多様性と進化
1.生物の形の多様性と進化 −その普遍的考え方を求めて−
2.遺伝子にかかれている設計図とは何か
3.形態形成のカスケード,分類学,そして進化 −形態を生成するダイナミクス−
第 II 編 動物の形の進化
4.チョウの翅の色模様の発生と進化
5.スケールイーターの左右性のダイナミクス
6.生物の模様をつくる化学反応
7.生物の階層的進化と各進化段階における進化要因
8.巻貝の巻き方形成とその進化
第 III 編 植物の形と適応
9.植物の形に適応的意義を探る
10.樹木の分枝構造にみる可塑性と多様性
11.草本植物のシュートの形と環境への適応
12.葉の形,適応進化とその遺伝子的背景
13.花からまなぶ形態・進化の法則性
14.リンデンマイヤー・システムとしての植物根系の形態
第 IV 編 遺伝子と形態形成
15.動物の形態形成とその遺伝子群
16.多重遺伝子族の形成過程の数理モデル解析
17.形態形成におけるTGF-βファミリーの役割と進化
18.動物の進化とHox遺伝子
19.ショウジョウバエの翅の形成メカニズム
20.節足動物の付属肢の形成と進化
第 V 編 生物における集団とパターン
21.細胞性粘菌における比率の制御とパターン調節
22.バクテリアコロニーのパターンの多様性
23.植物個体群における個体間の相互作用様式と空間パターン形成
24.植物樹冠の形態と種間の共存パターン
25.種の形質は飛び飛びに分布する −種の離散的詰め込み−
第 VI 編 生物の形態解析
26.古代の生態系をCGで再現する
27.理論形態を用いた生物のかたちの解析 −古生物学と形態形成理論の接点−
28.生物形態とその変形をどのように定量化するか −幾何学的形態測定学への道−
まえがき
第 I 編 形の多様性と進化
1.生物の形の多様性と進化 −その普遍的考え方を求めて− [関村利朗]
1-1 形の多様性の問題
1-2 形についてのいくつかの視点
1-3 新しい研究の流れ
1-4 おわりに
2.遺伝子にかかれている設計図とは何か [本多久夫]
2-1 「設計図」という言葉
2-2 設計図の複製による生物体の自己増殖
2-3 形づくりにつながる細胞パターン形成
2-4 組織・器官の形づくり
2-5 遺伝子がやっていること
3.形態形成のカスケード,分類学,そして進化 −形態を生成するダイナミクス− [Brian C. Goodwin]
3-1 はじめに
3-2 カサノリ目
3-3 葉 序
3-4 四足動物の外肢
3-5 おわりに
第 II 編 動物の形の進化
4.チョウの翅の色模様の発生と進化 [H. Frederik Nijhout]
4-1 はじめに
4-2 翅のパターンの機能
4-3 翅のパターンの構造
4-4 さまざまな種のパターン
4-5 広域パターン(bold pattern)の構成
4-6 おわりに
5.スケールイーターの左右性のダイナミクス [高橋 智]
5-1 タンガニイカ湖とスケールイーター
5-2 多型とESS
5-3 モデル
5-4 モデルの解析
5-5 2種のスケールイーターでの左右性の振動
6.生物の模様をつくる化学反応 [近藤 滋]
6-1 動物の模様の不思議
6-2 模様は色素細胞のモザイク
6-3 化学反応の波:チューリング・パターン
6-4 熱帯魚の縞模様は波のように動く
6-5 波の形成にかかわる遺伝子
7.生物の階層的進化と各進化段階における進化要因 [団まりな]
7-1 階層性とその判定基準
7-2 原核細胞の出現
7-3 ハプロイド細胞への飛躍
7-4 ディプロイド細胞の成立と発展
7-5 上皮体制(腔腸動物)の確立
7-6 間充織体制(原体腔動物)の発達
7-7 上皮性体腔体制(真体腔動物)へ
7-8 おわりに
8.巻貝の巻き方形成とその進化 [森田利仁]
8-1 はじめに
8-2 巻き方を決める機構
8-3 進化が生み出せなかった形態
8-4 おわりに
第 III 編 植物の形と適応
9.植物の形に適応的意義を探る [酒井聡樹]
9-1 はじめに
9-2 栄養条件の良いパッチを探す植物
9-3 明日を信じるか −林床の稚樹の選択−
9-4 おわりに
10.樹木の分枝構造にみる可塑性と多様性 [竹中明夫]
10-1 はじめに
10-2 資源の分布に応じて形を変える
10-3 樹種が変われば形も変わる
10-4 おわりに
11.草本植物のシュートの形と環境への適応 [関村利朗]
11-1 はじめに
11-2 葉の受ける日照量と葉序パターン
11-3 葉序パターン形成モデル
11-4 遺伝子発現とその役割
11-5 おわりに
12.葉の形,適応進化とその遺伝子的背景 [塚谷裕一]
12-1 葉の形の多様性
12-2 環境適応とLeaf Index
12-3 進化現象を遺伝学的に検証する
12-4 シロイヌナズナにおける葉の縦と横の制御
12-5 ケーススタディー:渓流沿い植物からAN とROT3 のホモログは見つかるか
12-6 今後の展望
13.花からまなぶ形態・進化の法則性 [清水健太郎]
13-1 花の「統一理論」
13-2 大きな違いを小さな変化で説明する
13-3 花の起源:ダーウィンの「忌まわしき謎」
13-4 今後の展望
14.リンデンマイヤー・システムとしての植物根系の形態 [福谷郁子・重定南奈子・高須夫悟]
14-1 はじめに
14-2 リンデンマイヤー・システムを用いた根系構造パターン
14-3 リンクの長さと半径
14-4 標準パターン
14-5 最適根系構造
14-6 まとめ
Appendix
第 IV 編 遺伝子と形態形成
15.動物の形態形成とその遺伝子群 [野地澄晴]
15-1 はじめに −40億年の歴史を担う遺伝子−
15-2 形態形成単位と形態形成遺伝子単位について
15-3 形態形成遺伝子単位(MGM)の特徴
15-4 形態形成遺伝子単位(MGM)による形態進化
15-5 おわりに
16.多重遺伝子族の形成過程の数理モデル解析 [舘田英典]
16-1 はじめに
16-2 多重遺伝子族
16-3 多重遺伝子族進化モデルの数理的解析
16-4 おわりに
17.形態形成におけるTGF-βファミリーの役割と進化 [上野直人]
17-1 はじめに
17-2 動物種とTGF-βファミリー
17-3 受容体とシグナル伝達系の進化
17-4 遺伝子機能の保存
17-5 線虫におけるTGF-β
17-6 おわりに
18.動物の進化とHox遺伝子 [黒岩 厚]
18-1 はじめに
18-2 Hox遺伝子の構造
18-3 Hox遺伝子発現の法則性
18-4 Hoxの進化と起源
18-5 形態の多様化とHox
18-6 パラログの機能分担
18-7 おわりに
19.ショウジョウバエの翅の形成メカニズム [多羽田哲也]
19-1 はじめに
19-2 ショウジョウバエのヘッジホッグとDpp
19-3 ヘッジホッグ・シグナルの伝達機構
19-4 Dppモルフォゲンの信号伝達とターゲット
19-5 Dppシグナルに拮抗するDad
19-6 Dppシグナルに拮抗するbrinker
19-7 Dppモルフォゲン活性の視覚化
19-8 おわりに
20.節足動物の付属肢の形成と進化 [林 茂生]
20-1 はじめに
20-2 胸部付属肢の初期発生と脚の分節化
20-3 パターン形成に働くシグナル分子
20-4 脚の近遠軸の始まり
20-5 脚の分節化
20-6 昆虫の翅の起源
20-7 おわりに
第 V 編 生物における集団とパターン
21.細胞性粘菌における比率の制御とパターン調節 [井上 敬]
21-1 細胞性粘菌の形態形成
21-2 比率の制御
21-3 パターン調節
21-4 パターン形成
21-5 パターンの階層構造
22.バクテリアコロニーのパターンの多様性 [三村昌泰・松下 貢]
22-1 はじめに
22-2 コロニー形成の実験
22-3 コロニー形成の理論
22-4 おわりに
23.植物個体群における個体間の相互作用様式と空間パターン形成 [横沢正幸]
23-1 はじめに
23-2 植物個体群の空間構造動態のモデル
23-3 植物個体群がつくる空間パターン
23-4 おわりに
24.植物樹冠の形態と種間の共存パターン [原 登志彦・横沢正幸]
24-1 はじめに
24-2 拡散方程式と群落光合成モデル
24-3 樹冠形態と共存条件
24-4 おわりに
25.種の形質は飛び飛びに分布する −種の離散的詰め込み− [佐々木 顕]
25-1 はじめに
25-2 競争種の形質の進化とニッチ分割
25-3 二栄養段階のなかでの種の詰め込み
25-4 非対称競争のもとでの系統循環:ボディーサイズの進化
25-5 おわりに
第 VI 編 生物の形態解析
26.古代の生態系をCGで再現する [宇佐見義之]
26-1 はじめに
26-2 古代生物の生態の研究
26-3 カンブリア紀の爆発的進化
26-4 アノマロカリスの生態
26-5 進化アルゴリズムとは
26-6 生物の形の進化 〜 形態の進化に伴う能力の急激な増大
26-7 古代の生物をVRとCGで再現する「デジタル・ロストワールド」
27.理論形態を用いた生物のかたちの解析 −古生物学と形態形成理論の接点− [生形貴男]
27-1 はじめに
27-2 理論形態学の歩み
27-3 理論形態学の試行錯誤
27-4 理論形態学の夢
27-5 おわりに
28.生物形態とその変形をどのように定量化するか −幾何学的形態測定学への道− [三中信宏]
28-1 はじめに −生き物の「かたち」をめぐって−
28-2 「かたち」をはかる −形態測定学のデータと諸方法−
28-3 標識点とは何か
28-4 サイズ=シェイプ,シェイプ,サイズ
28-5 形状の変形の分割
28-6 おわりに −「かたち」の定量化は何をもたらしたか−
あとがき
参考文献・引用文献一覧
生物名索引
事項索引
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関村 利朗
せきむら としお
1947年 生まれ。広島大学大学院理学研究科博士課程修了。中部大学教授などを歴任。主な著書に『理論生物学入門』(共著、現代図書)、『チョウの斑紋多様性と進化』(共監修、海游舎)などがある。
野地 澄晴
のじ すみはれ
1948年 愛媛県に生まれる。福井大学工学部卒業、広島大学大学院理学研究科博士課程修了。岡山大学助手・講師、徳島大学教授・学長などを歴任。主な著書に『発生システムのダイナミクス』(共編、共立出版)、『キーワードで理解する発生・再生イラストマップ』(共編、羊土社)、『発生と進化』(共著、岩波書店)などがある。
森田 利仁
もりた りひと
1956年 生まれ。東北大学大学院理学研究科博士課程修了。主な著書に『古生物の形態と解析』(分担執筆、朝倉書店)などがある。
執筆者一覧 (pdfファイル)
(執筆者の所属は初版刊行時)
(情報は初版刊行時のものから一部修正しています)
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