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行動遺伝学入門 −動物とヒトの“こころ”の科学−
Introductory Behavior Genetics
国立遺伝学研究所准教授 医博 小出 剛・
東北大学名誉教授 理博 山元大輔 著 編著
A5判/232頁/2色刷/定価3080円(本体2800円+税10%)/2011年11月発行
ISBN 978-4-7853-5847-1
C3045
行動遺伝学は、これまで多くの研究者だけでなく一般の人々の興味も引き付けてきた。行動に遺伝的要因が関与していることがわかってから、あるいはそれ以前からも、ヒトの性格は親に似たりすることがあるのだろうかと思いを巡らす人も多かっただろう。また、身近な動物、たとえば犬や猫をみて、その行動の特徴の顕著な違いをもたらす遺伝的な仕組みは何だろうと思う人も多いかもしれない。このように、行動遺伝学は、これまで多くの人がペットや家畜動物、野生動物、さらにはわれわれヒト自身を見ながら感じていた疑問を解き明かそうとするものである。
本書は、そのような行動遺伝学をこれから学んでみたいと思う人が、まずこの研究分野の全体像を把握する上で必要な情報を得られることを目標にして企画した。少しでも多くの人が行動遺伝学の門をたたくきっかけとして、本書が役立てば幸いである。
サポート情報
◎ まえがき
◎ あとがき
◎ 人名索引/事項索引 (以上 pdfファイル)
1.行動遺伝学の概略
2.線虫の行動遺伝学
3.ショウジョウバエの行動遺伝学
4.社会性昆虫の行動遺伝学
5.ゼブラフィッシュの行動遺伝学
6.イトヨの行動遺伝学
7.ソングバードの発声学習・生成における行動遺伝学
8.マウスの行動遺伝学
9.マウス逆遺伝学により明らかになる行動−神経回路−遺伝子
10.イヌの行動遺伝学
11.家畜動物の行動遺伝学
12.霊長類の行動遺伝学
13.ヒト双生児における性格と遺伝
14.遺伝子変異により生じる行動異常疾患
15.精神疾患の行動遺伝学
16.行動遺伝学の新たな展開
まえがき (pdfファイル)
1.行動遺伝学の概略 [小出 剛]
1-1 行動と遺伝子の関係
1-2 動物進化と行動遺伝学
1-3 行動における人為的選択の効果
1-4 行動の遺伝的基盤
1-5 神経回路と行動の遺伝学
1-6 ヒト疾患モデルとしての行動遺伝学
1-7 行動に関わる遺伝要因と環境要因
1-8 本書のねらい
文献
用語解説
2.線虫の行動遺伝学 [飯野雄一]
2-1 モデル生物としての線虫
2-2 線虫の遺伝学/行動遺伝学の歴史と手法
2-2-1 生殖と遺伝の様式
2-2-2 行動変異体の分離とマッピング
2-2-3 トランスジェニック株の作製
2-2-4 遺伝子ノックアウト
2-3 線虫の行動遺伝学の研究の概観
2-3-1 神経系の基本機能
2-3-2 感覚受容
2-3-3 行動可塑性
2-3-4 個体間相互作用
2-4 線虫の行動遺伝学の威力
2-5 おわりに
文献
用語解説
3.ショウジョウバエの行動遺伝学 [山元大輔]
3-1 モデル生物としてのショウジョウバエとその特徴
3-2 ショウジョウバエでの行動遺伝学の歴史
3-3 行動遺伝学の現在
3-4 行動遺伝学のこれから
文献
用語解説
4.社会性昆虫の行動遺伝学 [石川由希]
4-1 生物学における社会性
4-2 社会性昆虫の生態と分業
4-3 社会性昆虫の行動遺伝学
4-4 カースト分化の内分泌メカニズム
4-5 社会性昆虫の分業における生体アミンの役割
4-6 社会性昆虫の分業に関する遺伝的基盤
4-7 社会性昆虫の行動遺伝学の展望
文献
用語解説
5.ゼブラフィッシュの行動遺伝学 [揚妻正和・岡本 仁]
5-1 モデル生物としてのゼブラフィッシュとその特徴
5-2 ゼブラフィッシュの遺伝学の歴史
5-3 ゼブラフィッシュで現在進められている行動遺伝学
5-3-1 運動神経の制御に関する研究
5-3-2 視覚,嗅覚,聴覚に関する研究
5-3-3 ドラッグスクリーニングを始めとした,精神疾患へのアプローチに関する研究
5-3-4 より複雑な行動とそれに関わる神経回路
5-3-5 ゼブラフィッシュを用いた手綱核の研究 −左右非対称な神経回路とその情動の制御−
5-4 ゼブラフィッシュの行動遺伝学の展望
文献
用語解説
6.イトヨの行動遺伝学 [北野 潤]
6-1 はじめに
6-2 イトヨの行動研究のはじまり
6-3 形態の多様性の遺伝基盤
6-4 イトヨの行動の多様性
6-5 イトヨの行動の遺伝解析
6-6 今後の展望
文献
用語解説
7.ソングバードの発声学習・生成における行動遺伝学 [和多和宏]
7-1 はじめに:実験動物としてのソングバードとその特徴
7-2 ソングバードにおける囀りの研究の歴史
7-3 ソングバードで進められている囀りを司る神経回路の研究
7-4 ソングバードの囀りとそれに関わる遺伝子
7-5 ソングバードの行動遺伝学の展望:系統進化要因を突破口とした取り組み
文献
用語解説
8.マウスの行動遺伝学 [小出 剛]
8-1 モデル生物としてのマウスとその特徴
8-2 マウスにおける行動遺伝学の歴史
8-3 マウスで現在進められている行動遺伝学
8-4 マウス行動遺伝学の展望
文献
用語解説
9.マウス逆遺伝学により明らかになる行動−神経回路−遺伝子 [岩里琢治]
9-1 マウスのリバースジェネティクス(逆遺伝学)
9-2 動物行動研究へのマウス逆遺伝学の導入
9-3 マウス逆遺伝学の精密化
9-3-1 Cre/loxP システム
9-3-2 Tet-ON/OFF システム
9-3-3 関連技術・リソースの進歩
9-4 マウス行動遺伝学のひろがり
9-5 マウス行動遺伝学の未来への展望
文献
用語解説
10.イヌの行動遺伝学 [荒田明香・武内ゆかり]
10-1 はじめに
10-2 「イヌ」の誕生と変容
10-3 イヌにおける行動遺伝学の歴史
10-4 問題行動にまつわる遺伝学的研究
10-5 イヌにおける気質関連遺伝子の探索
10-6 イヌにおける行動遺伝学の展望
文献
用語解説
11.家畜動物の行動遺伝学 [桃沢幸秀・武内ゆかり]
11-1 家畜動物の特徴
11-2 家畜動物における行動遺伝学の歴史
11-3 家畜動物における行動遺伝学の研究例
11-3-1 ミンクの常同行動(stereotypic behaviour)
11-3-2 ニワトリの羽つつき行動(feather pecking)
11-4 家畜動物における行動遺伝学の展望
文献
用語解説
12.霊長類の行動遺伝学 [村山美穂]
12-1 はじめに
12-2 霊長類の行動と遺伝子
12-3 種間の対立遺伝子の比較
12-4 性格を評定する
12-5 今後の研究進展の可能性
文献
用語解説
13.ヒト双生児における性格と遺伝 [山形伸二・安藤寿康]
13-1 はじめに
13-2 双生児法
13-3 人間行動遺伝学から得られた知見
13-4 人間行動遺伝学の最近の方向性
文献
用語解説
14.遺伝子変異により生じる行動異常疾患 [井ノ上逸朗]
14-1 遺伝子異常による行動関連疾患研究の歴史
14-2 ハンチントン病研究と遺伝子解明
14-3 ポジショナルクローニングの始まり
14-4 トリプレットリピート病と表現促進
14-5 ハンチントン病の遺伝リスク
14-6 アルツハイマー病
14-7 遅発性アルツハイマー病の感受性遺伝子同定
14-8 家族性アルツハイマー病の原因遺伝子
14-9 将来展望
文献
用語解説
15.精神疾患の行動遺伝学 [治徳大介・吉川武男]
15-1 精神疾患と遺伝
15-2 精神疾患の遺伝学の現状
15-2-1 全ゲノム関連研究(GWAS)
15-2-2 パスウェイによるアプローチ
15-2-3 候補遺伝子研究
15-2-4 中間表現型によるアプローチ
15-2-5 動物モデルによるアプローチ
15-3 今後の展望
文献
用語解説
16.行動遺伝学の新たな展開 [山元大輔]
16-1 一般性から多様性の理解へ
16-2 C. elegans の摂食行動に見られる系統差の遺伝的基盤
16-2-1 「会食型」と「孤食型」
16-2-2 npr-1 遺伝子多型と摂食行動
16-2-3 摂食行動型と感覚入力
16-2-4 摂食行動型を決定するニューロン群
16-2-5 ニューロペプチドY ホモログの作用様式
16-2-6 摂食多型とcGMP
16-2-7 酸素応答と摂食行動多型
16-2-8 摂食行動多型とグロビン遺伝子変異
16-3 ショウジョウバエ自然集団の摂食行動二型を支える遺伝子機構
16-3-1 foraging 遺伝子の発見
16-3-2 負の平衡淘汰による多型の維持
16-4 モデル生物の枠を超えて
16-5 行動遺伝学のこれから
文献
あとがき (pdfファイル)
人名索引
事項索引
執筆者紹介 (所属などは初版刊行時のものです)
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小出 剛
こいで つよし
1961年 愛媛県に生まれる。大阪大学大学院医学研究科博士課程修了。ケンブリッジ大学研究員、国立遺伝学研究所助手・助教授などを経て現職。主な著書に『個性は遺伝子で決まるのか』(ベレ出版)、『マウス実験の基礎知識[第2版]』(編集、オーム社)などがある。
山元 大輔
やまもと だいすけ
1954年 東京都に生まれる。東京農工大学大学院農学系研究科修士課程修了。三菱化学生命科学研究所研究員・室長、科学技術振興事業団 山元行動進化プロジェクト総括責任者、早稲田大学教授、東北大学教授などを歴任。現在 情報通信研究機構未来ICT研究所室長。主な著書・訳書に『最新 応用昆虫学』(共著、朝倉書店)、『行動はどこまで遺伝するか』(SBクリエイティブ)、ツーパンク著『行動の神経生物学』(翻訳、シュプリンガー・ジャパン)などがある。
(情報は初版刊行時のものから一部修正しています)
→ 執筆者一覧 (pdfファイル)
(所属などは初版刊行時のものです)
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