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新・生命科学シリーズ
気孔 −陸上植物の繁栄を支えるもの−
Stomata Enabled the Plant to Prosper on Land
九州大学名誉教授 理博 島崎研一郎 著
A5判/184頁/2色刷/定価2860円(本体2600円+税10%)/2023年8月25日発行
ISBN 978-4-7853-5875-4
C3045
気孔は、陸上における植物の生存を可能にするのみならず、光を効果的に吸収する広い葉、高い背丈、水や無機塩類の輸送を行う導管の形成と機能発揮に必須の役割を果たした。気孔の形成と進化がなければ、陸上は茶褐色で岩だらけの太古のままであるか、あるいは、川の流域の限られた地域のみが背丈の低い植物で覆われた世界であったと思われる。
本書では、気孔の進化の道筋をたどりながら、気孔の開閉機構を通して、植物における光やホルモン、$\rm{CO_2}$ の情報伝達とイオン輸送の具体例を示すことで、その役割と機能を解説する。
著者より:
気孔は植物の表皮にある小さな孔で、開・閉を行う。気孔が外気からの$\rm{CO_2}$ 取り込みや、$\rm{H_2O}$ 流出の通路になることは良く知られている。気孔はこの働きによって、光合成を可能にするのみならず、地球の歴史を通して、広い葉や高い背丈の植物の形成や過酷な環境に適応した多様な植物種の出現を促し、地表は多くの植物で覆われることになった。また、穀物として利用される生産性の高い植物は、気孔の進化が要因の一つである。
面白いことに初期陸上植物と現生植物の気孔の役割は異なっており、現生植物の気孔の効果的な働きは、原初気孔からの構造的、機能的進化の寄与が大きく、化石や系統の異なる植物の気孔構造の比較から、その一端を知ることができる。
一方、気孔は光や植物ホルモンに応答して開・閉を行い、情報伝達やイオン輸送の制御など植物生理学の興味深い対象を含んでおり、その分子機構の解明が進んでいる。
本書は、これらを分かりやすく解説した。
サポート情報
◎ はじめに (pdfファイル)
◎ 索引 (pdfファイル)
◎ 正誤表 (pdfファイル)
◎ 丹羽康夫博士、寺島一郎博士による書評 (日本植物学会のサイト)
1.気孔の構造
2.気孔の働き
3.気孔の起源と進化
4.気孔の開口
5.気孔の閉鎖
6.気孔の $\rm{CO_2}$ に対する応答
7.気孔の形成と進化型気孔のイオン輸送
はじめに (pdfファイル)
1.気孔の構造
1.1 気孔の誕生と植物の陸上進出
1.2 最も古い気孔の化石
1.3 気孔とは
1.4 気孔はどこにある
1.5 気孔の大きさと密度
1.6 気孔の形と構造
1.6.1 孔辺細胞(guard cells)
1.6.2 副細胞(subsidiary cells)
1.6.3 気孔腔と細胞間隙
1.7 気孔のない植物
1.8 葉ができるには気孔が必要
1.9 最も進化した気孔
1.10 気孔は多くの因子に応答する
1.10.1 光
1.10.2 $\rm{CO_2}$
1.10.3 大気汚染ガス
1.10.4 温度
1.10.5 湿度
1.10.6 植物ホルモン
1.10.7 病原体
2.気孔の働き
2.1 気孔の基本的な働き
2.1.1 $\rm{CO_2}$ の取り入れ口になる
2.1.2 蒸散を行う
2.1.3 水を吸い上げる駆動力を形成する
2.1.4 閉鎖により水不足から身を守る
2.1.5 開閉を昼夜逆転させ砂漠で生きる
2.1.6 迅速な開閉によって光合成を増大させ水を節約する
2.2 気孔の多様な働き
2.2.1 地球レベルの水と $\rm{CO_2}$ 循環に寄与する
2.2.2 葉温低下が生存を可能にする
2.2.3 葉温低下が収量を増加させる
2.2.4 外気から水を取り込む
2.2.5 酸素の取り入れ口になる
2.2.6 黄化葉でも気孔は働く
2.2.7 すばやく閉鎖し有毒ガスの侵入を防ぐ
2.2.8 閉鎖によって病原菌の侵入を防ぐ
2.2.9 蒸散は $\rm{ABA}$ による気孔閉鎖を仲介する
3.気孔の起源と進化
3.1 コケ植物(Bryophytes)の気孔
3.1.1 ツノゴケ類
3.1.2 蘚類
3.1.3 苔類
3.2 小葉植物(Lycophytes)の気孔
3.2.1 イワヒバ類
3.2.2 ヒカゲノカズラ類
3.2.3 ミズニラ類
3.3 シダ植物(Monilophyta)の気孔
3.3.1 マツバラン類
3.3.2 ハナワラビ類
3.3.3 トクサ類
3.3.4 リュウビンタイ類
3.3.5 薄嚢シダ類
3.4 裸子植物(Gymnosperms)の気孔
3.5 被子植物(Angiosperms)の気孔
3.6 化石植物の気孔
3.7 初期陸上植物の気孔の役割
3.7.1 ツノゴケ類
3.7.2 蘚類
3.7.3 気孔の起源は単一
3.7.4 気孔の機能拡大に存在部位が関与
3.8 分岐年代の異なる植物の気孔機能の実験的検証
3.8.1 植物の進化と気孔の形状
3.8.2 孔辺細胞と表皮細胞の形状に基づく気孔開口
3.8.3 表皮細胞膨圧の気孔開口への影響
3.8.4 気孔開口の“誤った応答”
3.8.5 副細胞は気孔コンダクタンスを迅速に増大させる
3.8.6 気孔の構造的進化
3.9 気孔腔と細胞間隙の進化
3.10 小さい気孔は効率が良い
4.気孔の開口
4.1 気孔の開口機構
4.2 気孔開口の浸透圧調節物質は $\rm{K^+}$
4.3 気孔開口の分子機構
4.3.1 青色光は $\rm{K^+}$ の取り込みを誘発し気孔を開口させる
4.3.2 $\rm{K^+}$ の通路は $\rm{K^+}$ チャネル
4.3.3 過分極は $\rm{K^+}$ チャネルを通して $\rm{K^+}$ を取り込ませる
4.3.4 青色光は $\rm{H^+}$ を放出させ膜電位を過分極させる
4.3.5 プロトンポンプは細胞膜 $\rm{H^{+}\text{-}ATPase}$
4.3.6 青色光受容体はフォトトロピン
4.3.7 フォトトロピンから細胞膜 $\rm{H^{+}\text{-}ATPase}$ への情報伝達
4.3.8 フォトトロピンは陰イオン流出を抑制する
4.3.9 光合成による気孔開口
4.3.10 光合成に有効な光と青色光の相乗効果
4.4 青色光による気孔開口機構の進化
4.4.1 気孔の青色光応答の分布
4.4.2 気孔の青色光応答に関わる分子の進化
4.4.3 気孔の青色光応答の生理的意味
5.気孔の閉鎖
5.1 気孔の閉鎖機構
5.2 気孔閉鎖の分子機構
5.2.1 $\rm{K^+}$ を流出させるには膜電位の脱分極が必要
5.2.2 閉鎖の駆動力は $\rm{Ca^{2+}}$ に活性化される陰イオンチャネルが形成
5.2.3 $\rm{ABA}$ は孔辺細胞の細胞質 $\rm{Ca^{2+}}$ の濃度を上昇させる
5.2.4 $\rm{Ca^{2+}}$ 濃度の上昇機構
5.2.5 $\rm{S \text{-}}$型陰イオンチャネルの実体は $\rm{SLAC1}$
5.2.6 $\rm{ABA}$ による気孔閉鎖を促進するタンパク質リン酸化酵素
5.2.7 $\rm{ABA}$ による気孔閉鎖を阻害するタンパク質脱リン酸化酵素
5.2.8 $\rm{ABA}$ 受容体は $\rm{PYR/PYL/RCAR}$
5.2.9 $\rm{ABA}$ による情報伝達の初期過程
5.2.10 気孔閉鎖における $\rm{Ca^{2+}}$ 依存と $\rm{Ca^{2+}}$ 非依存の経路
5.3 $\rm{ABA}$ による気孔閉鎖機構の進化
5.3.1 $\rm{ABA}$ による気孔閉鎖は初期陸上植物から備わっていたとする説
5.3.2 $\rm{ABA}$ による気孔閉鎖は種子植物から備わったとする説
5.4 気孔の浸透調節物質と開閉の駆動力の進化
6.気孔の $\rm{CO_2}$ に対する応答
6.1 $\rm{CO_2}$ による気孔閉鎖
6.2 気孔開口と閉鎖の相互作用
6.3 $\rm{CO_2}$ による気孔密度の制御
6.4 気孔応答と細胞小器官
6.4.1 葉緑体
6.4.2 ミトコンドリア
6.4.3 液胞
6.4.4 細胞骨格
7.気孔の形成と進化型気孔のイオン輸送
7.1 気孔の形成機構
7.2 進化したイネ型気孔
7.2.1 イネ型気孔における副細胞の役割
7.2.2 イネ型気孔副細胞のイオン輸送
7.2.3 副細胞を欠失したイネ型気孔の応答能
7.2.4 イネ型気孔の副細胞の形成
7.3 トウモロコシとイネの気孔の働き
7.3.1 トウモロコシは $\rm{C_4}$ 回路を備えた
7.3.2 イネの葉面は気孔密度が高い
7.4 $\rm{CAM}$ 植物の気孔
参考文献
引用文献
索引 (pdfファイル)
コラム1.1 小葉植物
コラム1.2 $\rm{C_3}$ 植物,$\rm{C_4}$ 植物
コラム1.3 $\rm{CAM}$ 植物
コラム2.1 気孔コンダクタンス
コラム2.2 水ポテンシャル(葉内と外気)
コラム2.3 水ポテンシャル(孔辺細胞と外液)
コラム2.4 蒸散比と水利用効率
コラム2.5 導管と仮導管の構造
コラム4.1 アポプラストとシンプラスト
コラム4.2 孔辺細胞プロトプラスト
コラム4.3 ポンプとチャネル
コラム4.4 パッチクランプ法
コラム4.5 細胞膜 $\rm{H^{+}\text{-}ATPase}$ の働き
コラム4.6 フォトトロピン
コラム4.7 作用スペクトルと吸収スペクトル
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島崎 研一郎
しまざき けんいちろう
1949年 福岡県に生まれる。九州大学理学部卒業、九州大学大学院理学研究科修士課程修了。環境庁国立公害研究所主任研究員、米国スタンフォード大学博士研究員、九州大学助教授・教授などを歴任。主な著書・訳書に『植物の代謝コミュニケーション』(分担執筆、共立出版)、“Light Sensing in Plants”(編著、シュプリンガー)、テイツ/ザイガー他編『テイツ/ザイガー植物生理学・発生学 原著第6版』(共同監訳、講談社)などがある。
(情報は初版刊行時のものです)
しくみと原理で解き明かす 植物生理学
植物生理学
植物の成長
植物の生態 (改訂版)
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