スペクトル線の偏移(Redshift and Blue Shift)

天体の光のスペクトル線を同定したときに, 観測される波長(振動数)はもとの波長(振動数)としばしば異なっています. そのことを一般的に,スペクトル線の偏移(line shift)と呼びます. ドップラー効果その他,いろいろな原因でスペクトル線の波長がずれます.
なお,連続スペクトルももちろん波長がずれます. ただし,線スペクトルに比べて, 連続スペクトルの偏移を測定することは簡単ではありません.

赤方偏移と青方偏移

もし天体から発した光の波長が長くなって(振動数は低くなって)観測されたなら, 色でいえば黄色の光が赤色の方に移動するので, 赤方偏移(redshift)といいます. 逆に,もし波長が短くなって(振動数は高くなって)観測されたなら, 色でいえば黄色の光が青色の方に移動するので, 青方偏移(blue shift)といいます.
これらのスペクトル線の偏移を赤方偏移と総称します.

赤方偏移の求め方

スペクトル線が偏移する原因

ドップラー効果
(Doppler effect)

動画(avi file 6.5M)

ドップラー効果(Doppler effect)とは, 波の発生源(音源や光源)と観測者が相対的に動いているときに, 観測者が測定する波の波長(振動数)が発生源でのそれと比べて異なる現象のことです.
たとえば,左図のように波の発生源が動いているとき, 進行方向前方では一定時間内に届く波の数は多く(振動数は高く)なり, 逆に進行方向後方では波の数は少なく(振動数は低く)なります.
ドップラー効果の名前は, この現象を1842年に最初に研究したオーストリアの物理学者 C.J. ドップラーに由来します.

音のドップラー効果
光のドップラー効果
視線速度と赤方偏移の関係
相対論的な場合
連星αLepの視線速度
特異連星SS433とW50

重力赤方偏移
(Gravitational redshift)
質量の大きな天体の近くから放射された光を遠方で観測すると, 光の振動数が小さくなり,したがって波長が長くなって観測されます. これを重力赤方偏移と呼びます.

MCG-6-30-15銀河中心核のX線輝線スペクトル
MCG-6-30-15銀河中心核輝線のモデル計算例
重力赤方偏移の関係式

宇宙論的赤方偏移
(Cosmological redshift)
遠方の天体から発した光(すなわち過去の宇宙で発した光)が現在の地球に届くまでに, 光の伝わる宇宙全体が膨張しているので,光の波長が長くなります. これを宇宙論的赤方偏移と呼びます.

銀河団CL0016+16
IRAS銀河の赤方偏移
ハッブルの法則


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